いつかの日曜日

息子がデュエルマスターズ カード、 ジョラゴンを売りに行きたいというので

レンタルビデオ店と併設されている下取り店へ行ってきました。

 

デュエルカードは1パック150円で5枚入りのカード(一枚30円ですね)で

保有している200枚ほどのカードの中から120枚くらい取り出して「これは全部いらない」と言い

さらに「このキラキラ4枚は売らないけどいくらで売れるか聞いて欲しい」

 

・120枚は売る

・それとは別の4枚(レアカードなのかわかりませんが)は手放す気持ちは無いが下取り金額だけ知りたい

 

そういう事でして

下取り店に向かう息子と二人の車内では

「きっと千円にはなる」とウッキウキだったのです

(多分もっとすごい金額で売れると想像していて控えめに言って1000円というニュアンス)。

いざお店に到着し

スタッフさんに件の「この120枚は売りたいです」「この4枚は金額だけ知りたいです」と伝え査定の結果を待つ事に

その間

「200円のガチャガチャをやりたい」という息子

それは今まさに合計124枚ほど査定中のジョラゴンカードが下取り店独自で5枚組にパックしたガチャガチャなんですが

自分のお小遣いなら止める理由も無く「いいよ」と伝えると

いざお小遣いを投入しガチャガチャを回して出てきたカードがキラキラだったそうで

「これは300円くらいでは売れる」と興奮気味に言いまして

その発言が純粋に羨ましく 下取り店独自の200円ガチャでもしかしたらすっごい価値のあるカードが出てくると信じていられる君にワタシハナリタイ。

 

縁日にある紐を引っ張って運が良ければ豪華家庭ゲームが当たるかもという屋台にワクワクしている子供に費用対効果の話をするのと同じように

小学3年生の彼に「仕入れ」と「売上げ」の関係なんて今は野暮なのである。

 

店内に

「査定番号1番の方、査定が終わりましたのでカウンターまで起こし下さい」

というアナウンスが

 

 

査定が終わったようだ

息子がさっきガチャで出たカードを売りたいとか言い出したらまた時間がかかるなとボンヤリ考えながらカウンターに行く私、ウッキウキの息子。

 

査定番号を渡し店員さんは説明をしてくれた

 

店員さん「先ずこの4枚の一枚目、満額の買い取り額は200円ですが傷がついているので10円です、二枚目、満額の買い取り額は100円ですが傷がついているので10円です、 三枚目、満額の買い取り額は100円ですが傷がついているので10円です、四枚目、満額の買い取り額は100円ですが傷がついているので10円です」

 

 

 

店員さん 「この四枚で40円です」

 

 

 

店員さん 「この4枚と残りの120枚合わせて」

 

 

 

店員さん 「65円になります」

 

 

 

斜め右下に視線を向けると息子は微かに震えていた。

 

価値があると思い込んでいたカードが機械的に繰り返される

「10円です」「10円です」「10円です」「10円です」に愕然としていたのだろう

それはバレンタインの日

きっとあのA子ちゃんは僕に気があるに違いない

手作りチョコレートとまではいかなくとも友チョコレートは頂けるだろうと期待するも

A子ちゃんは何事も無くスルー

いやいや、B香はくれるだろう B香スルー

おいおい、C美はくれるよな? C美スルー

残すはD里  D里スルー

 

これは堪える

 

きわめつけは残りの120枚のカードで30円にも満たないという所だ。

ピュタゴラスの定理

『直角三角形の斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい』

美しい響きですね。

ピュタゴラスは鍛冶屋でいろいろなハンマーの音を聴き

ハンマーの重さで簡単な数学的関係、ハンマーの重さが二分の一三分の二などの条件にあえば音が調和す事を発見した

数式って美しいんですよね。

 

一枚の原価が30円に対して120枚集めてもかなわない

 

『120枚-30円=マイナス5円』

 

こんな数式は美しくないんだ、今の彼にとって

父としては後にこの教訓を息子の最終定理として胸に刻んでくれたらありがたい

安いお勉強代だ。

 

 

 

私  「どうする?」

 

息子 「……」

 

私  「売る?」

 

息子 「…売らない…」

 

店員さんに「すみません、全て持ち帰りますお時間を取らせて申し訳ありませんでした」と告げ下取り店を出る。

 

 

帰りの車中は元気が無く

それは自分の大切なモノにほとんど価値はありませんよと言われたら落ち込むだろうなと

 

「1000円にはなるって言ってたのに全部で65円だってwww」

 

なんて煽った方が元気になるかなとも思ったのですが

触れてはいけない何かに触れてしまいそうな気もするので黙っている事に。

 

しばらくの沈黙の後

 

息子 「もうジョラゴンカードなんて買いたくない」

 

私 「うん」

 

息子 「でも… やっぱり買いたい……」

 

私 「うん…… (アカン、こんなの笑ってまう)」

 

何かを悟ったんでしょうか

買いたくない、けど買いたい

そんな純粋に気持ちを伝えられる君にワタシハナリタイ。

 

 

意気消沈しながらも息子はサッカーに行き

その間

娘とデートをしていまして

帰宅してサッカーから帰ってきた息子と風呂に入ったのですが

しきりに「今日は疲れた」 「今日は本当に疲れた」「今日はもう本当に疲れた」

口を開けば「疲れた」「疲れた」と連呼し

いつもならサッカーで何があったかとか楽しそうに話すのですが

きっと「全部で65円」の精神的ダメージで疲れたのでしょう

父の私も精神的疲労で簡単に具合を悪くするのでその気持ちわかりますよ。

 

「65円の値打ちしかないの?僕のジュラゴン」

 

良い事ばっかりあるわけないよ、それでこそMY LIFE。